おはようございますタヌキです。
中国の習近平国家主席は30日、香港での反体制活動を禁じる「香港国家安全維持法」に署名し公布し、香港政府は同日夜施行しました。
中国による統制強化は、香港返還以来の発展を支えてきた高度な自治権と法の支配を揺るがし、香港を東南アジアの拠点としている日本企業を含む各国企業にも大きな影響を及ぼしそうです。
金の卵を産むガチョウの腹を割く中国共産党本部
香港は中国と世界を結ぶアジアの金融・ビジネスセンターとしての役割を果たしてきたという背景があり、中国への直接投資の7割は香港を経由し、香港には多くの外資系企業が進出している国際都市として位置づけられています。
国家安全法案は、国籍や人種を問わず、外国人も処罰対象となりうるとの指摘もあり、香港でのビジネスやそこに住む外国人への影響(突如連行され、中国本土で処罰を受けるというリスク)を懸念する声が海外で広がっている。
結果的に、香港も一国二制度のもとで享受していたメリットを失い、外資マネーを引き付けられなくなるリスクが高まりかねない。
日米欧の主要7カ国(G7)の外相は17日の共同声明で、国家安全法の制定を急ぐ中国に「重大な懸念」を示していました。
ただ中国への反発の度合いは各国それぞれ異なる強度になっています。
元々中国と折り合っていないアメリカのトランプ政権は26日に香港問題に関わる一部の中国共産党員へのビザ発給の規制を発動すると発表したのに続き、29日には香港に認めてきた軍民両用技術を輸出する際の優遇措置を取りやめるとした。
しかし、日本や欧州連合(EU)はアメリカのような強硬な対中制裁にまでは踏み切っていません。
これは、民主化を求める学生を中国当局が武力で鎮圧した天安門事件を機に、海外が一斉に制裁に踏み切った1989年とは、世界貿易における中国の存在感の大きさなど、当時と状況は異なっていることが背景にあります。
最近は深センなど、中国本土内でも外貨を稼げる拠点都市は出来てきていますが、1997年に英国から中国に返還されて以来、『資本主義圏からの経済と情報』という中国本土では得られない、『金の卵を産み続けてきたガチョウの腹』を『中華は一つ』という我々では理解しがたい理想の元に裂いてしまいました。
香港から撤退する企業、香港在住の富裕層が香港から逃げ出してもおかしくは無いでしょう・・・
目先の欲望(中国共産党による一党支配)に駆られて、裂いてしまったガチョウはもはや金の卵を産むことはありません・・・
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中国政府の狙い
行政・立法・司法それぞれで香港へ中国共産党本部の影響力を強めること。
中国政府は過激な抗議運動を直接取り締まることも視野に入れ、民主派の立法会(議会)選挙への立候補を一段と制限し、政治的な締め付けを強めるという狙いもある。
香港は外国籍の裁判官が多く「司法の独立」が担保されてきたが、国家安全法案に絡む事件を審理する裁判官は、香港政府トップの行政長官が指名することになる。
当然ながら中国共産党本部、ひいては習近平国家主席への忖度など考えないまっとうな外国籍の裁判官は排除され、判決が常に中国寄りになる懸念が生じます。
実際のところ国家安全法の内容は?
中国政府は治安維持機関として香港に「国家安全維持公署」を設置し、香港政府が行政長官をトップとして設立する「国家安全維持委員会」の監督・指導にあたる。
国家安全法の内容(目的)は大きく分けで4つになります
- 国家を分裂させる行為
- 政権を転覆させる行為
- テロ行為
- 外国や本土外の勢力と結託して国家に危害を加える行為
中国政府はさらに同委に顧問を派遣することとしており、新法には「香港の他の法律と矛盾する場合、国家安全法が優先される」との規定も盛り込まれ、中国共産党の悲願ともいえる『一国二制度消滅』は願いが叶うことになります。
民主派運動家やそれを支援する国家・企業からみた問題点は?
国家分裂など4つの処罰対象の定義が曖昧なところがあり、実際の法運用がどのレベルの締め付けになるか分からない点です。
法施行直後のニュースでは、一万人規模のデモが起こり、300人以上が逮捕されています。
若者たちがデモで訴える「香港独立」の主張や中国共産党への批判、欧米に中国への制裁を求めるといった活動も違法とみなされる恐れもあるかもしれない。
言論の自由や人権が軽視され、一国二制度のなくなった香港の行政は、中国共産党の胸先一つとなります。
そもそも香港の「高度な自治」とは?
1997年に香港が英国から中国に返還された際、返還後50年間は高度な自治を保障する「一国二制度」が導入された。
憲法にあたる香港基本法は、香港政府に行政管轄権や立法権、独立した司法権を与えている。言論や報道の自由も認められ、市民は基本法が約束した自由や権利を訴え続けてきた。
2003年には「国家安全条例」、2019年には刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案をめぐって、大規模なデモが起きており、香港政府はいずれの条例も撤回に追い込まれています。
当時から、香港当局の長である行政長官は中国共産党本部の代理人と噂されていましたが、「一国二制度に基づく高度な自治」と「天安門事件でやらかした武力鎮圧によって世界に示してしまった人権軽視」がデモに対して武力鎮圧行為拡大エスカレートへの歯止めとなり、民主派の盾となってきました。
日本と香港の関わりは?
昔から経済活動や人的交流で深い結びつきがある。
2019年6月時点(コロナ禍以前)の統計では香港に拠点を置く日本企業数は1413社と中国企業に次ぐ多さで、香港の在留邦人は2万5千人超に上りました。
香港への日本産農林水産物の輸出額は国・地域別でトップのお得意様・・・
また、香港からの訪日客は229万人に上り、約3人に1人が訪日しているほど関わりが深かったのです。
しかし、「香港国家安全維持法」施行後は香港にいる各企業の駐在員、日本からの観光客も含め「国家安全維持公署」にいつ目を付けられるか分からない。
このまま外国企業・外国人が香港に留まっていても、安全の確保は行政側からは保証されません。
というか、国家が牙をむいてくるリスクと隣り合わせになってしまいます。
ましてや、これまでの活動で当局に目を付けられている民権派活動家は、かなり危険な状況に置かれていることになります。
イギリスより中国日本本が返還された1997年には、返還直前に香港市民は世界中に脱出しています。
法が施工されてしまった今、もはや脱出こそ至難の業かと・・・
かつて悪名高い九龍城砦が香港には存在していましたが、これからは香港都市全体が中国共産党の手により香港全土が息を殺して生活しなくてはならない『魔窟』になってしまうかもしれません。
今日もお読みいただきありがとうございます。
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